耐震化&棟取直し工事で永く安心安全を


ここでは棟の取り直し工事(耐震施工)が大切な理由をご説明致します。

 

昨今の大震災(阪神淡路・東日本・熊本・能登)でかなりの家屋が被災しました。

弊社も東日本大震災の際に被災しましたが震災後、数多の家屋の応急処置や復旧工事を行いました。

その際に一番多かったのが棟の倒壊です。※棟とは屋根の最上部や斜めに瓦が数段積んである部位です。

 

弊社が復旧工事をしていく際に棟の倒壊原因を色々と調べた結果、

・棟内部の荒木田土や撥水ではない「なんばん」の老朽化による崩れ。

・棟瓦(のし瓦)の不十分な緊結による崩れ(中には未緊結の場合もありました)

・下り棟先端にある鬼瓦の緊結針金の劣化&断裂による下り棟の倒壊や崩れ。

・棟の下のカットした桟瓦が無緊結のため浮きやズレが生じたのが原因の棟の倒壊や崩れ。

・何の対策も無く高く積んだ事で倒壊しやすい状況だった事。

以上が主な原因だと想定致しております。

 

これらの倒壊は棟の取り直し工事(耐震施工)を行う事で倒壊を防ぐ有効手段となっています。

よって永く安心した屋根(家屋)にするには棟の耐震化が最重要となっています。

 

現在弊社では耐震性の高いガイドライン工法を取り入れています。

またご希望で弊社オリジナルの耐震鉄筋等を組み込む事も可能です。

特に降り棟用の弊社オリジナル耐震鉄筋の組込みは東日本大震災時に非常に効果的でした。

この降り棟用の耐震鉄筋を組み込んだ棟は特殊な屋根以外は被害がゼロでしたし

多少のズレも生じませんでしたので自信を持ってお奨めしています。

 

以下に現在主流の施工方法や対策を記載致しますので是非ご覧ください。

■昔の棟が崩れやすい(耐震性が低い)理由■


↓の画像はガイドラインが制定される前の工法で積まれた棟です。

 

以前の棟内部には荒木田土と言う水田などの下層でみられる粘土質な土で

粘りが強く屋根(特に棟)に適していると昔から使われていました。

しかし荒木田土は水(雨)に弱く長い間雨に曝されるとボロボロ・サラサラになってしまうので

風雨から守るため荒木田土表面に漆喰を塗る必要がありました。

 

その後、荒木田土に代わる棟内部材として「なんばん」が誕生しました。

土(粘土)を使用していないので強度が高く耐久性にも期待をしていましたが、

「なんばん」も雨風が当たりやすい環境だと数年で表面が崩れてしまう事が多々ありました。

その後「なんばん」ではなく、なんばんに撥水材を混入させた「撥水なんばん」が誕生します。

 

現在「撥水なんばん」は湿式棟工事の主流で耐久性もあり表面も奇麗に仕上がるので

弊社では「撥水なんばん」を使用した棟の場合は漆喰工事は必要なしと判断しています。

定期的に必要な漆喰工事が省ける事によりメンテナンスコストが下がりますのでお得かと思います。

 

また東日本大震災で緊結針金の弱さが露呈しました。

特に入母屋屋根で見られる降り棟の鬼瓦は棟の自重を受けやすい状態ですが

細い銅線を3~4本撚り合わせて使用している事が多く、棟瓦も細い銅線が使われていたり

中には無緊結で積んでいる棟もあり、正直大きな地震に対応出来る状態ではありませんでした。

現在弊社では緊結針金はステンレス製、鬼瓦・鬼台は太い被覆付きの銅線を複数本使用しています。

 

棟以外に棟との取り合いの桟瓦に問題がある場合があります。

棟の下の桟瓦は屋根の寸法上カットする事がありますが、

カットする事により瓦を下地に引っかける爪が無くなり非常にズレやすくなります。

この桟瓦がズレたり浮いたりすることで上にある棟瓦にストレスが掛かり倒壊やズレを発生させます。

現在ではこのカットした桟瓦を穴あけ緊結やクリップ固定、接着をする事で倒壊を防いでいます。

 

■湿式工法と乾式工法について■


現在の棟工事は湿式工法と乾式工法の2種類の工法があります。

 

湿式工法は荒木田土やなんばん、撥水なんばんを使用した工法です。

※弊社での工事の際は撥水なんばんのみとなります

 乾式工法は撥水なんばんを使用せずブチルやアルミのテープを使用する工法となります。

 

※メリット※

湿式は撥水なんばんを隙間に押し込む事で瓦の形に隙間なく成型され乾燥後にガッチリ固定される。

乾式はテープなので超軽量なので荷揚げが楽になり作業も少し早いので工期の短縮になります。

 

※デメリット※

湿式は材料の重さがあるので屋根の軽量化には向かない事(それでも以前よりは超軽量です)

乾式はテープ内にどうしても空間が出来るので湿式の様にガッチリと安定しない

また紫外線の影響を受けやすく湿式材より劣化が早く感じるところ。

 

※メリット・デメリットを踏まえて※

弊社では湿式工法をメインに施工しています。やはり湿式の方が瓦の安定力が強く

後のメンテンナンス等を含めてもコストパフォーマンスが高いと考えています。

デメリットとされる重量についても通常の家屋では問題ない事が多いので心配は不必要かと思います。

但し、平板瓦で差し棟工法の場合は構造的に乾式工法のみとなります。

 

※湿式工法に使用される材料について※

以前に使用された荒木田土(粘土)が雨に弱い事や強度アップを目指して開発されたのが

「なんばん」と言われる粘土を使用しない棟内部材となります。

 

発売当初のなんばんは荒木田土より強固に固まり耐久性があるとの事でしたが

数年経過すると表面がボロボロとなり劣化が早い事で頭を抱えました。

 

その後「なんばん」に撥水材を混入した「撥水なんばん」が誕生しました。

撥水剤を混ぜる事で吸水率を大幅に低減し表面も滑らかでより強固な棟になります。

表面がしっかり固まる事で弊社では撥水なんばんのみで施工した棟の場合に限り

漆喰工事を行わなくても良いという判断となりましたので漆喰工事の削減=コストの削減となります。

 

また撥水なんばんの原料に軽石(珪石)を使用し軽量に特化した撥水なんばんもあります。

棟が長くなればなるほど屋根の軽量化にも効果的ですので興味のある方は是非ご検討ください。

 

※注意事項※

「なんばん」と「撥水なんばん」は別物ですのでご注意ください‼

現在でも撥水ではない「なんばん」は販売していますので見積り時に確認してください。

弊社では全て撥水なんばんを使用していますので安心してお任せください。

 

■現在の瓦はしっかり緊結しています■


瓦の緊結とは「下地と瓦や瓦同士を釘やステンレスビス、ステンレス線」等を使用して固定する事です。

※以下ステンレス=SUSと表記します

 

弊社では和型瓦の場合ガイドラインに沿うよう1枚おきにSUS釘にて緊結しています。

※2022年1月より新築屋根工事の場合、全数緊結が義務付けられます。

 リフォームの場合は義務付けられませんが全数緊結にする事が望ましいとなっています。

 

平板瓦・M型瓦・S型瓦は現在も新築・リフォーム共にSUS釘による全数緊結を行っております。

また軒瓦には7釘等を併用して強風による瓦の浮き上がりを防止しています。

 

袖瓦はSUS釘やSUSビス、パッキン付SUSビスを用いて全数緊結となります。

基本的に3本で緊結していますので、弊社工事で強風による被害は今まで出ておりません。

 

7寸丸(冠)瓦はパッキン付SUSビスにて全数緊結し瓦の繋ぎ目を接着しています(横ズレ・傾き防止)

のし瓦の場合SUS線にて全数緊結し繋ぎ目を点付け接着しズレにくい棟としています。

負荷が掛かりやすい鬼瓦は被覆付きの銅線(1本~3本)で緊結しています。

 

屋根の寸法上どうしても桟瓦をカットして使用する場合があります。

以前はカットした瓦の下に屋根用粘土を敷き、高さを調整して置いただけの状態でしたが、

現在は穴を開けてSUS釘やSUSビスで固定したり瓦用クリップを使用してズレない様に施工しています。

 

※注意※

瓦を釘やビスで緊結する場合、必ずステンレス製を使用してください。

以前は銅製の釘を使用する事が多かったですが銅製はスクリュー状ではないため 抜けやすいです。

絶対ダメなのは鉄製の釘やビスを使用する事です。鉄釘や鉄ビスは瓦を緊結する際に使用する穴で膨張し

瓦を割ってしまう事が確認されています。この事を知らないリフォーム業者も数多くいますので

弊社の様な屋根専門業者にご相談される事を強くおススメ致します。

■耐震性向上化は棟の内部にあり■


棟金具と芯材■

 ガイドライン工法が施行され棟の内部にステンレス製の棟金具と芯材(主に垂木材)を取り付け

 それらにパッキン付きのステンレスビスで緊結するのが主流となっています。

 震災時上記の工法で倒壊した棟は弊社ではひとつもありませんでした。

 

 最近は芯材に木材ではなく、樹脂材を使用する事が増えてきています。

 木材より長寿命との事ですが確かに耐腐食性は高いと思いますが耐紫外線はどうなのか…。

 弊社ではどちらも施工していますので機会があれば検証してみたいと思います。

 

■耐震鉄筋組込み■

 上記の棟金具は市販品ですが、弊社では以前より高い棟には耐震鉄筋を組み込んでいました。

 この工法は先代のアイデアで今から40年以上前から特別な棟には施工していました。

 震災前はこれらの施工には手間が掛かるし本当に効果があるのか疑問でしたが、

 震災後に施工現場を伺った際、これらのオリジナル鉄筋を組み込んだ棟が無傷でした。

 実際弊社が施工した現場で耐震仕様にした棟がズレたのは僅か2件でした。

 1件はお寺の庫裏の降り棟1か所で、もう1件は2F住宅屋根の中央部が特殊な箱棟の大棟(陸棟)でした。

 

 大棟や隅棟の場合、段数に合わせて4分筋をカットし棟木に打ち込みやすいよう鋭利に加工。

 その後防錆剤を塗り、乾燥したら完成です。

 これらを棟木・隅木に合わせて910㎜(3尺)ピッチで打ち込みます。

 棟を数段積んだ所で打ち込んだ鉄筋に横方向の鉄筋を緊結していきます(棟段数により複数の場合あり)

 この鉄筋は棟を積みながら撥水なんばんで埋め込む形となりますので、かなり強固な棟となります。

 また鉄筋自体も棟木や隅木に直接打ち込むので金具タイプよりかなり効果が期待出来ます。

 最後に横方向に緊結した鉄筋に棟の一番上になる丸瓦用の緊結針金を出します。

 内部に固定した鉄筋から締める(押さえる)様に緊結しますので強固でズレない棟となります。

 

■その他■

 細かい所ですが弊社では棟瓦を積んでいく際に棟瓦同士を点付け接着をしていきます。

 接着する事で棟瓦が互いにズレを防ぎ結果棟瓦の落下や倒壊を防ぐことが出来ると考えます。

 他にも穴を開けてSUS釘やSUSビスで固定したり、緊結針金を銅製からSUS製に変更したり、

 傷みやすい鬼瓦・台の緊結針金は被覆付きにしたりと工夫を凝らしています。

 細かい所にも気を配り、永く安心出来る屋根になるよう日々努力しています。

 

■棟の取直し工事(減段)・耐震化工事の流れ■


最近は棟の取直し工事や耐震化工事に興味を持って頂ける事が多くなっていますので

以下で棟の取直し工事(減段含む)や耐震化工事の流れについてご説明致します。

 

■棟の取直し工事 数段積む場合

1.まずは既存の棟を一時解体します。

  棟瓦は再使用するので移動だけし、棟内部の棟土や漆喰は撤去し袋詰めして運搬処分します。

  その後一旦屋根上を清掃します。

 

2.勝手瓦(棟の真下にある瓦)の整列調整をします。

  勝手瓦下には木材や撥水なんばんで高さを調整し、カットして緊結出来ない小さい瓦は

  瓦用のクリップやシリコン接着してズレを防止します(穴を開けてSUS釘・ビスで緊結する場合あり)

  ※耐震仕様の場合はこの時点で鉄筋を棟木や隅木に打ち込んでおきます。

 

3.棟瓦・鬼瓦の緊結針金を全て交換します。

  緊結針金は稀に再使用可能な場合がありますが、耐用年数を考慮すると交換が望ましいです。

  鬼瓦や鬼台は被覆付き銅線、棟瓦はステンレス線を使用しています。

 

4.棟の再施工をします。

  棟内部は土(荒木田土)を使用せず弊社では全て撥水なんばんにて積み上げていきます。

  耐震鉄筋使用の場合は棟の最上段となる丸瓦を横鉄筋に取り付けたSUS線を使用して緊結します。

  棟の一番上の丸瓦を棟内部に引っ張る力が働きズレや倒壊を防ぐ効果が出ます

  棟の再施工で以前の施工より寸法をシビアに棟を積んでいくことで棟瓦が不足する場合があります。

  また凍害やヒビ割れ等が見られた際は交換となりますので別途瓦代が発生致します。

 

5.費用について

  数段積む棟の取り直しや耐震化の費用ですが棟の長さ、高さにより

  かなり費用が変わってきますので基本的には現地調査後の見積もりとなります。

  その際に減段化(8段積みから5段に低くする等)のご相談も承っております。

  ※屋根のバランスや雨仕舞い、鬼瓦の大きさ等で減段化が不可能な(問題がある)場合もあります。

  

 

■棟の取り直し工事 1段積みに変更の場合

1.まずは既存の棟を一時解体します。

  棟瓦は再使用しないので処分、棟内部の棟土や漆喰も撤去し袋詰めして運搬処分します。

  その後一旦屋根上を清掃します。

 

2.野地板に棟金具をビス緊結し棟金具に垂木材(または樹脂材)をビス緊結します。

 

3.勝手瓦(棟の真下にある瓦)の整列調整をします。

  勝手瓦下には木材や撥水なんばんで高さを調整し、カットして緊結出来ない小さい瓦は

  瓦用のクリップやシリコン接着してズレを防止します(穴を開けてSUS釘・ビスで緊結する場合あり)

 

4.垂木材の両脇に撥水なんばんを設置し7寸丸瓦を設置していきます。

  切妻屋根の場合は巴瓦、寄棟の場合はカッポン・三又瓦が必要となる場合があります。

  最後に丸瓦1本ずつパッキン付きのステンレスビスで緊結して完成となります。

  カッポンや巴は2本ずつパッキン付きステンレスビスで緊結しています。

 

5.費用について

  最近ご依頼の多い棟の1段化ですが芯材を取り付け、そこに瓦をビス緊結することで

  シンプルな見た目になり且つ耐震化(軽量化)出来るので人気となっています。

  但し既存の瓦を再使用出来ないため棟瓦がすべて新品となるため費用が掛かります。

  また既存の瓦は全て処分となりますので処分費用、芯材を取り付ける為の費用も掛かります。

  倒壊の心配が少なくなりメンテナンス費用も抑えられますが費用対効果を考えて選択してください。